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食中毒と大腸菌O-157の関係性とは?なぜ大腸菌O-157は胃酸で死なないのか解説

 

今回は「食中毒と大腸菌O-157の関係性及び、大腸菌O-157が胃酸で死なない理由」について分かりやすく説明します。

 

食中毒は6~9月にかけて流行る細菌性の病気であり、悪化すれば最悪の場合死に至ることもある厄介な病気です。この食中毒には、数種類の病原性細菌が関与しており、その病原性細菌の作用はどれも類似しています。

 

今回は、食中毒の原因の中でも最も有名な”大腸菌O-157株"に着目したいと思います。

 

今回の記事はこんな方にオススメ

・事前予防策と事後解決策を知りたい

・食中毒と大腸菌O-157の関係を知りたい

・どうして大腸菌は胃酸で死なないの?

 

 

1. 食中毒と大腸菌O-157の関係性

 

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大腸菌O-157由来の食中毒は大腸菌O-157が原因なのですが、なぜ大腸菌O-157により食中毒になってしまうのでしょうか。大腸菌O-157は「ベロ毒素」という毒性物質を生産し、細胞外に放出します。このベロ毒素が食中毒の由来です。

 

ベロ毒素

 

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ベロ毒素はタンパク質です。このタンパク質は、人間が体内でタンパク質を作り出すときに必須であるリボソームという生体装置を攻撃し、リボソームの働きを阻害します。リボソームは体のすべてのタンパク質を作り出している装置であるため、このリボソームが阻害されてしまうと、タンパク質を正常に作り出せなくなってしまいます。

 

その結果、細胞が死滅してしまいます。つまり、ベロ毒素が入り込んでしまった細胞は死滅してしまう運命をたどるのです。では、ベロ毒素が入り込んでしまう細胞とは、どのような細胞なのでしょうか。

 

大腸菌は名前の通り「腸」に生息する細菌です。そのため、大腸菌O-157は腸内でベロ毒素を作り出し、放出します。ベロ毒素が大腸菌O-157により放出されると、腸内にベロ毒素が拡散されることになります。ベロ毒素が拡散されると、腸内の細胞はその毒素を見境なく取り込んでしまいます。これが食中毒の最初の一歩です。

 

腸内の細胞がベロ毒素を取り込んでしまうと、先ほど説明したように、腸内細胞のリボソームがベロ毒素により阻害されてしまいます。その結果、ベロ毒素が入り込んだ腸内細胞は死滅してしまいます。これが繰り返され、腸内の細胞が次々に死滅していきます。そして最終的には、腸内がただれてしまい、血便などにつながってしまうのです。

 

このように、大腸菌O-157は一度腸内に入り込むと、非常に危険です。また、大腸菌は37℃で最も増殖します。そして人間の腸内も36℃~37℃です(環境に適合するために大腸菌が腸内の環境に適合した、という生物系統的歴史あり)。

 

そのため、一度腸内に大腸菌O-157が入り込むと、一気に腸内で増殖してしまい、その結果、腸内にベロ毒素が広がってしまいます。つまり、一度大腸菌O-157が大腸内に入り込むと、大腸菌を殺すか、自然に消えていってくれるのを待つかしかないのです。

 

2. 大腸菌O-157が胃酸で死なない原理

 

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普通の生物は、強酸などの中にさらされると死にます。では、なぜ大腸菌は強酸である胃酸の中でも死なずに生きていられるのでしょうか。それを説明するためには、まず普通の生物がなぜ強酸で死んでしまうのかについて説明する必要があります。

 

強酸で生物が死ぬ理由

生物が強塩酸で死んでしまう理由には2つあります。

①強塩酸でタンパク質が壊れてしまうから

②強塩酸の「酸」の力で細胞が壊れてしまうから

 

実は一見同じように見えて、全く違う反応なのです。そして、皆さんが想像している「強塩酸の怖さ」は①の方です。しかし、本当に恐ろしいのは②の反応なのです。では、それぞれについて説明していきます。

 

①強酸でタンパク質が壊れてしまうから 

これはおそらく想像しやすいと思います。人間は体のほとんどがタンパク質で構成されています。そして、そのタンパク質は「立体構造」を形成して機能しています。そのため、このタンパク質の「立体構造」が崩れると、タンパク質は機能しなくなります。タンパク質の「立体構造」は一度壊れると、もう二度と元に戻ることはありません。

 

タンパク質の「立体構造」が壊れてしまう条件は以下です。

■低温や高温にさらされたとき

■強酸性や強アルカリ性にさらされたとき

■強いエネルギーを受けたとき

 

これらすべてに共通していることは、タンパク質の立体構造を形成している「分子内結合」に影響を及ぼす反応を起こすから、です。つまり、これらの存在によりタンパク質は壊れてしまうと思ってください。

 

そのため①では、タンパク質が壊れてしまうことにより、死んでしまうのです。皮膚に強塩酸を垂らすとドロドロしてきて、皮膚が溶けてしまったように見えるのは、皮膚のタンパク質の立体構造が崩れてしまったからなのです。

 

①に関しては、タンパク質が壊れることが原因であるため、多少皮膚に垂らしたり飲んだりした程度ではすぐには死にません。ただれはしますが。②のように、「細胞が」強塩酸にさらされた時が危険なのです。

※①も十分危険なので絶対にマネしないでください

 

体内でのタンパク質の作られ方と、立体構造の形成については以下の記事で詳しくまとめています。もし興味があれば是非ご覧ください。 

www.moneykinskywalker.jp

 

②強酸の「酸」の力で細胞が壊れてしまうから

こちらは、タンパク質は関係しません。では、「酸」の力で細胞が壊れてしまうとはどういうことなのでしょうか。これを説明するためには、そもそも酸性の水溶液はなぜ酸性なのか、アルカリ性の水溶液はなぜアルカリ性なのかについて説明する必要があります。

 

≪酸性の水溶液が酸性である理由≫

ここでは塩酸を例にとりましょう。塩酸の化学式はHClです。塩酸は液体ですよね。実は、液体中では、塩酸は以下のように分離をして存在しています。

 

HCl ⇔ H⁺ + Cl⁻ (この分離のことを電離と呼ぶ)

 

そのため、塩酸は水溶液中ではH⁺とCl⁻という形で存在します。このH⁺が「酸性」の源なのです。つまり、H⁺の量が酸性の強さの定義ということです。一般的に、水溶液中にH⁺がたくさん存在していれば強酸性、少なければ弱酸性と呼ばれています。

 

≪アルカリ性の水溶液がアルカリ性である理由≫

こちらも酸性と同様の原理です。水酸化ナトリウムを例にとりましょう。水酸化ナトリウムの化学式はNaOHです。液体中では、水酸化ナトリウムは以下のように電離しています。

 

NaOH ⇔ Na⁺ + OH⁻

 

そのため、水酸化ナトリウムは水溶液中ではNa⁺とOH⁻という形で存在します。このOH⁻が「アルカリ性」の源なのです。つまり、OH⁻の量がアルカリ性の強さの定義ということです。一般的に、水溶液中にOH⁻がたくさん存在していれば強アルカリ性、少なければ弱アルカリ性と呼ばれています。

 

また、酸性の強さ、アルカリ性の強さは一般的にpHという基準で表されます。pHには1~14までの範囲が存在し、1に近づけば近づくほど酸性が強く、14に近づけば近づくほどアルカリ性が強いです。

 

以上が「酸性」と「アルカリ性」の定義です。では、細胞はなぜ「酸」の力、つまりH⁺の量で死んでしまうのでしょうか。

 

生物の細胞内は、pH7(中性)で保たれています。そして、この中性条件下(H⁺とOH⁻の割合が均衡している状態)でのみ、細胞内の代謝が起きるように設計されています。つまり、このH⁺とOH⁻のバランスが崩れてしまうと、その細胞は細胞内で代謝反応を起こすことができなくなってしまうということです。

 

細胞が強酸性にさらされると、細胞内にはH⁺がそれほど多くないのに対して、細胞外にはH⁺がたくさん存在するという状況になります。この世の中のものはすべて、物理の法則により「多い方」から「少ない方」へ移動するようにできています。そのため、この場合も同様に、細胞外のH⁺が細胞内に入り込んできます

 

その結果、細胞内にはH⁺が通常よりも多く存在してしまいます。そうなると、本来のH⁺とOH⁻のバランスが崩れてしまいます。そして、その細胞は細胞内で代謝反応を起こすことができなくなってしまいます

 

代謝反応を起こすことができなくなると、そもそもタンパク質すら作ることができなくなってしまいます。そのため、その細胞は死に至ります。つまり、「酸」の力で細胞が死ぬのは、細胞内のH⁺とOH⁻のバランスが崩れて代謝が行なわれなくなることが原因なのです。

 

GADシステムとは

先ほどの説明では、細胞が強酸性中にさらされると、細胞内のH⁺とOH⁻のバランスが崩れて死に至ると説明しました。では、同じ単細胞である大腸菌O-157細胞はどのようにして死を回避しているのでしょうか。以下をご覧ください。

 

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これは大腸菌が強塩酸である胃酸にさらされた時の状況を示しています。大腸菌の細胞でも、通常の細胞と同様に外からH⁺が入り込んできて、大腸菌の細胞内のH⁺濃度が上がります。

 

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大腸菌は、外からH⁺が入ってきたときに、あるシステムが働くように設計されています。それが「GAD(ギャド)システム」という機構です。これはどのようなシステムなのかというと、大腸菌の細胞外に存在する(胃の中にたくさん存在している)グルタミン酸を大腸菌の細胞内に取り込み、そのグルタミン酸を細胞内のH⁺と反応させることで、細胞内のH⁺を減らす、というシステムです。

 

具体的なシステムの反応は上記です。体外から取り込んだグルタミン酸を外から勝手に入り込んできたH⁺と反応させ、GABA(ギャバ)に変換することで細胞内のH⁺を減らし、pHが下がらないように保っています。この反応は、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)という酵素により触媒されるので、GADシステムと呼ばれています。

 

また、この反応では、グルタミン酸からCO₂(炭酸)が脱されることによりGABAが生成されるので、グルタミン酸脱炭酸酵素と呼ばれています。GABAは、あのGABA(ギャバ)です。脳の働きを活性化してくれるGABAです。

 

以下にわかりやすいようにまとめました。

 

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大腸菌は、このようにGADシステムを利用することで、細胞内にH⁺が増えてしまいバランスが崩れることを回避しているのです。そして、大腸菌は単細胞であり、人間のように細胞の外を皮膚のようなタンパク質で覆っていないので、必然的に①の危険性も回避しています。これが大腸菌が強酸の中でも生きられる理由です。 

 

3. 食中毒の事前予防と事後対策方法

 

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このように、胃酸という強酸ですら死なない大腸菌O-157を、私たちはどのようにして回避すればいいのでしょうか。ここでは「事前予防」と「事後予防」に分けて紹介します。

 

事前予防

事前予防では、そもそも大腸菌O-157を体内に入れないようにする必要があります。では、体内に入れないようにするにはどうすればいいでしょうか。

 

①大腸菌O-157が鶏、豚、牛、魚等の食材に感染している場合

■75℃以上の熱湯で最低2分は滅菌する

※必ず熱を通すような料理を作るようにしましょう

 

②空気中に大腸菌O-157が存在している場合

■空気中では増殖しないため、手洗いうがいで対処

 ※空気中には栄養がないので、食材などにつけなければ増殖しません

 

③食中毒の動物や他者から感染する場合

■必ず触れた後は手洗いうがいをする

※排便や体液からも感染するので注意が必要

 

【結論】

以上3つが、事前予防策です。基本的には、増やさなければ被害を被ることはないので、食材の熱滅菌や手洗いうがいにさえ気を付けていれば問題ありません。

 

事後対策

基本的には腸内の善玉菌に大腸菌O-157を倒してもらうしか方法はありません。大腸菌O-157を殺す抗生物質等は、非病原性大腸菌もターゲットにしてしまうケースが多いので、なかなかそのような抗生物質は存在しません。処方してもらうとすれば、大腸菌そのものに作用する抗生物質ではなく、ベロ毒素に結合して無毒化してくれる薬剤が良いでしょう。

 

これに関しては、ベロ毒素を無毒化してくれる薬剤自体が人体に及ぼす影響に加え、ベロ毒素の腸内への吸収速度と無毒化の速度のどちらが早いかも検証しなけらばなりません(無毒化する前に吸収されるようでは意味がないから)。そのため、なかなか薬剤治療は難しいかもしれません。

 

腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌である大腸菌O-157の増殖を抑制するあるいは体外へ排出してもらう対策、とにかく排便量を増やして大腸菌O-157を体外に排出する対策などが今のところベストなのではないでしょうか。

 

【結論】

事後対策については病院で排便量を増やしてもらう対策をとることが第一でしょう。